発見されたのはイタリアの高級自動車メーカー・フェラーリの「365GTB/4」シリーズ。「デイトナ」の愛称で知られる人気車だ。9月9日(現地時間)にイタリアで開催されたオークションに出品され、180万7千ユーロ(約2億3300万)で落札された。
話題になったのにはもう一つの理由がある。世界に1台しかないフェラーリだったからだ。
デイトナは1969年から73年にかけて1200台以上生産されたが、今回見つかったのはその中でも希少な、24時間耐久レース用のアルミ合金ボディー5台のうちの1台。しかも唯一、公道走行用に生産されたものだった。
ホームページの写真を見ると、ほこりまみれの赤い車体にさびたマフラーなど、長い年月の眠りを想像させる。なぜそんな貴重な車が日本の納屋で長い間ほこりをかぶっていたのか。オークションを運営するRMサザビーズによれば、69年に生産された同車は71年に日本のディーラーによって海を渡った。公式サイトの出品ロットには、
〈1975年に岐阜のGoro Guwa氏が購入し、79年に名古屋のTateo Ito氏の手に渡った。その1年後、Makoto Takai氏の所有となり、車は約40年の間行方知れずになっていた〉
とある。70年代後半といえば、日本は空前のスーパーカーブーム。東海地方を走っていたであろうデイトナは羨望のまなざしを浴びていたことだろう。
「スーパーカーブームのピークは77年。70年代前半の日本にはフェラーリは100台ほどしかなかったと思います。フェラーリと言っても『フェアレディの間違いじゃないの?』と聞き返されるくらい、認知度は低かった。今では年間700から800台輸入されていて、合計2万台弱が日本に存在していると思います」
そう語るのはモータージャーナリストの清水草一氏だ。車好きなら誰もが憧れるフェラーリの、しかも“限定品”。2億円超の値段はどう映ったのか。
「意外に高くないなあというのが第一印象です。限定生産ではない“普通の”フェラーリデイトナでも、今買おうとしたら1億円くらいはします。それを考えると安いかもしれません。ただ、時代によって古いスーパーカーの値段は大きく変動していて、80年代前半には300万円くらいで買えたこともありました」
はやり廃りや、ブームに乗るか如何で価値が大幅に変わるスーパーカーだが、関心を持っていないことには価値すらわからない。
「興味がない人からすればまったく価値がわからない。長いこと乗らないランボルギーニのカウンタックのフロントガラスがすべり台になっていた、なんてエピソードがあるくらいです。今も全国のどこかの納屋にスーパーカーが眠っている可能性はありますよ」
この後、このクルマの運命は・・・